【関西セミナーレポート】2019年の入試分析からみる2020年入試対策について(後編)
今回は、2月8日に関西で実施された、2019年の入試傾向を報告するためのセミナーをレポート、後編です。
後編では、小川先生による国語の入試傾向の説明と、辻先生による理科の入試傾向と対策についてお届けします。
2020年の中学受験入試の参考にしていただければと思います。
2019年入試、国語で見えてきたこと
中学受験情報局の主任相談員、ならびに名門指導会の副代表、小川大介先生から関西の国語の2019年入試問題について説明がありました。
まず、小川先生の息子さんも今年、中学受験をしたというお話から始まりました。
息子さんが幼い頃から「子どもの勉強にはあまり関与しない」と決めていたようで、それよりも「どうやったら、子どもが自分で勉強できるようになるのか」を考えていたそうです。
その結果、1週間の学習スケジュールは息子さん自身が立てていて、小川先生はこの3年ほどその勉強には関与していないとのこと。
息子さんは6年生になっても睡眠時間9時間をキープし、灘中に見事合格しました。
「結果よりも、プロセスを大事にしてきた」という小川先生の言葉が印象的なエピソードでした。
今年の国語の入試問題で問われていたのは「シンプルな論理力」。
「むずかしい語彙力はいらない。大人の語彙力は求めていない。それよりも、論理の方が大事になってきた」と小川先生は言います。
そのためには、冒頭のお話にあった「学習のプロセス」が重要です。具体的には、塾の教材どう使うか、家庭学習をどう行うかが来年の結果につながるのです。
国語、学校ごとの傾向と対策について
実際の学校別の出題傾向と対策を見ていきます。
【灘】
1日目に作文が出たので、受験した子どもたちは、「作文が出た、やばい」「でもむっちゃ簡単やった」と口々に言っていたようです。
「50-100文字の作文のうち、単語がいくつか指定されていて、言葉の順番の指示も出ていました。こういった問題には、思考や作業のプロセスが大事になってきます。難しい語彙よりも、正しく文章を組み立てることができるかが問われています。大事なのは論理。いかに単純にして、いかに短く書くか、ということです」
2日目も文章内容をおさえて子どもの言葉で説明させるような問題しか出題されていない、と小川先生は言いました。
「文量もそんなに多くなかったと思います。5年生のテキストレベルとも言えるかもしれません。それでも点数が取れない子がいるのはなぜか。それは勉強法が正しくないから。偏差値55以上の子なら内容はわかるはず」と話します。どういうことなのでしょうか。
「こういった問題を解くために必要なのは、「事実を正しく説明する」こと。理由と結果(因果関係)の関係を文にするだけです。難しく言う必要はありません。順番をまちがえずに書くだけです。順番を考えながら、文章を整理していくような勉強をしてください」
【東大寺】
読みやすい文章を「対比」で読むという、東大寺のセオリーに変化はありませんでした。
小川先生は「何と何を比べるかをはっきりさせる力を身につけよう」と言います。
また、「ポイントは「らぬき言葉」が出たこと。ここに学校のメッセージがあります。基本的な文法知識、シンプルな論理の土台ができている子を求めているのです」とのこと。
こちらも入試までの学習プロセスが問われるような問題だったようです。
【聖母洛星】
「洛星は、やることを指示するようなていねいな設問でした」と小川先生。
それはなぜなのでしょうか。
「求めている答えを書かけない子が多いから、条件を渡して、少しは書ける子がほしいという学校側の期待の表れではないでしょうか。昔は問題文自体を翻訳することが必要だったけど、今は変わってきています。ていねいな設問によって、少しでも文章が書ける子を学校側が探しているのです。書けなくても、せめて思考力がある子を取りたいという、学校側の工夫とも言えるでしょう。素直に手を動かす子は点数をもらえますね」
難関校が求めているのは「グローバルな論理力」
また小川先生は、難関校が求めていることについて以下のように教えてくれました。
「近年の傾向からすると、グローバルな論理力が求められています。国籍や人種を超えていろんな人とつながりコミュニケーションがとれることが、これから必須になってくるからです。そのためには、誰にでもわかる言葉で、むだなく伝えるスキルが必要です。語彙力を発揮しても相手がわからなければ意味がありません。どれだけシンプルな言葉で相手に伝えることができるかが重要です」
世界で最も多くの人に使われている言語は「訛った英語」と言われています。
難しい語彙よりも、どんな相手にも正しく伝えることができるシンプルな論理力が、現代のグローバル社会に必要なのです。
究極の国語対策は「算数」
また、「数は、世界のどんな人にも共通の意味を届けられます。数字で語ることもグローバルといえるでしょう。究極の言語は数学です」と語る小川先生。
「今は、数学的思考力を邪魔しないような国語力が求められています。シンプルな論理力です。ですので、ご家庭で日々、子どもが書いた思考の手順がちゃんと筋がとおっているか、順番が正しいかを確認してあげることが重要です。テストを受けたあとに、これはどう考えたの?と聞いてあげましょう。わかりやすく論理を説明することができるかどうかが、国語の得点力につながります。子どもの説明が、大人の感覚でもちゃんとわかるかどうかを確認しましょう。
究極の国語対策は、算数を正しく学習することです。算数の問題を数多く解くのではなく、なぜその解法で答えに辿り着くことができるかを論理的に説明できるようになることなのです」
また、「志望校の実際の入試問題を見ることは大切です。学校ブランドや塾の延長線上で入試問題を見ないように気をつけましょう。塾のテキストは、必ずしも正しいとは限らないので、どうテキストを使うかを考えたほうがいいでしょう」というお話もありあした。
理科、2020年入試に向けてやるべきこと
最後は、中学受験情報局の主任相談員、名門指導会の副代表を務める辻義夫先生からの理科に関するお話です。
中学、高校の物理や化学の対策はするべき?
2019年の理科の入試では、中学や高校で習う物理や化学を入試で出題する学校があったようです。中学受験でどこまで対策をしたらいいのでしょうか。
「東大寺、大阪星光、甲陽学院、洛南、灘などの入試でも、こういった問題がいつ出てもおかしくないと思います。なぜこんな問題を出すのでしょうか。小学生には解けないのでしょうか。実は、そんなことはありません。ちゃんと作業ができる子なら、小学生でも解けるような問題になっているのです」
これは、どういうことなのでしょうか。辻先生は次のように説明してくれました。
「難関校の問題を解くためには、発想の飛躍が必要です。
習ってないことがらに対して、『先生、これ習ってません』ではなく、『習ってない問題だ。ラッキー、新しい知識が増える』という気持ちを持てるかどうかが大切です。中学や高校の問題が出ても、それを自分が習っている範囲でなんとかできないか、今まで習った知識を総動員して工夫できるような勉強をしている子が強いですね」
理科、学校別の傾向について
次に、理科の入試問題の傾向について学校別に説明がありました。
【灘】
「高校の化学や物理の分野から出された問題もありました。灘の理科では、詳細な暗記は必要ではありません。それよりも思考力・計算力が必要です。また、同じ問題が繰り返される『過去問のリバイバル』の傾向があります。
【東大寺】
「高校範囲からの出題はそんなに多くなかったようです。灘に比べると暗記事項も多いのでひととおり詰めておくといいでしょう。オーソドックスな難問はできるようになっておく必要があります」
【洛南】
「マニアックな問題が出てくる傾向があります。オーソドックスな問題ができる力は必須です。力学など物理の難問は過去問の演習が重要になってくるでしょう」
【大阪星光】
「高校の分野の対策は必要ないですが、ふだん勉強するときに『スーパー理科辞典』など中学受験の内容を超えるものを見る習慣をつけておくといいですね。他の難関校の過去問に取り組んでおくと効果的です」
【甲陽学院】
「知識レベルは標準的。高校分野は特に意識する必要はありません。大問の中に必ずハードルがあるので、越えられるようにしておきましょう」
【四天王寺】
「小学生の知識だけで解ける問題がほとんどです。高校分野の学習は特に必要ないでしょう」
関西難関校の理科の入試問題の特徴
最後に、難関校の理科の特徴についてのお話がありました。
「大事なポイントは、やりっぱなしにしないこと。テスト直しなどていねいに取り組んでください。また、難関校の問題には『習っていないこと』が多々あるので、今自分が持っている知識のどれを使ったら解けるのかなどの発想の飛躍が必要になってきます」
以上、2019年の関西中学入試傾向から、2020年への対策を立てるヒントとなるセミナーレポートをお届けしました。
ぜひお子さんの受験対策に活かしていただければと思います。