子どもの「思考の持久力」を高める言葉かけで、10歳の壁を上手に乗り越えさせよう
「10歳の壁」といわれる9歳から11歳のあいだは、それまでの幼い全知全能感が崩れ、自信を失いやすい時期です。
これは成長の証であり一過性のものなのですが、この時期は自分を過小評価しやすい時期なので「言葉かけ」がいつも以上に重要になってきます。
今回は、子どもの何事も最後までやり遂げようとする意思、すなわち「思考の持久力」を高める言葉かけやコミュニケーションについて考えてみます。
壁にぶつかったときに必要な「思考の持久力」
順調に進んでいたことが、ちょっと調子を崩したり、行き詰まってしまったときに、何事も最後までやり遂げようとする意思力が必要になってきます。
この、最後まで考えることをあきらめない「思考の持久力」は、持続的な学習意欲にもつながります。
「思考の持久力」を育むには、日々の親子のコミュニケーションや言葉かけが大切です。
否定の言葉が、否定の言葉を呼び込む
たとえば、ふだんは子どもの勉強を見ていないお父さんが、子どものテスト結果を見て「いったいどうなっているんだ!ちゃんと勉強を見ているのか」とお母さんを責めるような言い方をしたとします。
任せきりにしておいてテストのときだけ口を出されたら、お母さんもカチンときてしまいますよね。
すると、受け答えとして「でもね、あの子なりにがんばっているんだから」となりがちです。
もちろん、子どもを守るお母さんとしては、間違った受け答えではありません。
ところが、「でもね」という言葉に、お父さんは自分の意見を否定されたような気がして「そうやって、甘やかしているからだめなんだ」と、さらに否定で返してきたとします。
そうすると、お母さんも売り言葉に買い言葉で「こんなときだけ口をはさまないで。わたしも大変なんだから!」と、否定の言葉が否定の言葉を呼び込み、いつのまにか言い合いになってしまう。
こんな経験を、多くの方がお持ちなのではないでしょうか。
否定の言葉を、肯定の言葉にしてみる
もし、「でもね」という否定的な意味の言葉を「そうね」にしてみたら、どうでしょうか。
「そうね」と、いったん相手の言葉を受け止めて、「あなたの気持ちはわかるけど、あの子もがんばっているから」という言い方にすると、お父さんが受ける印象はだいぶ違うと思います。
子どもと話すときも同じで、大切なのは、子どものやったことを頭から否定するような言葉を使わないことです。
たとえば「○○しなきゃダメでしょう」と、親としては軽い注意のつもりで言ったとしても、子どもは「ダメ」という単語に反応して「自分はダメな子」だと言われているような気持ちになるかもしれません。
「ダメ」という言葉に否定的意味合いが強すぎるからです。
つい、こういう否定の言葉を口にしそうになったときは、一度冷静になり、「肯定の言葉」に変換することを意識してみてください。
言葉の「肯定変換」の例
たとえば「ゲームばかりしていると、成績が落ちるわよ」などの「○○すれば、△△になってしまう」ではなく、「算数の勉強をがんばると、宇宙飛行士になれるわよ」という「○○すれば、△△のようになれる」という、ポジティブな声かけを心がけましょう。
「○○しなさい」ではなく、「○○しようね」と言い換えるのも、簡単でいい方法です。
また「○○してくれると、お母さんうれしいな」と素直に思いを伝えたり、「一緒に○○しようか」という言葉もいいですね。
否定するのは簡単です。
でも否定の言葉をかけ続けると、子どもは萎縮してしまい、壁にぶつかったときも「どうせだめだ」と突破する意欲も失ってしまいます。
「なんで、こんなことができないの?」と言いたくなったとき、それをぐっとこらえて、「あなたは○○もできるはずなのに、どうしたのかしら」と言い換えてみてください。きっと、子どもの反応が変わるはずです。
否定の言葉に慣れてしまったお子さんは、むずかしい問題に遭遇したときに、すぐにあきらめてしまう傾向があります。
「自分はせいぜいこれぐらい」と思ってしまうのですね。そうならないためにも、「否定語を発したくなったら、肯定語への変換」を常に心がけてみてはいかがでしょうか。
子どもの「思考の持久力」がどんどん高まっていくはずです。