【苦手が定着してしまう スパイラル方式の落とし穴】 3つのタイプ別 苦手教科克服方法
こんにちは。
中学受験情報局 主任相談員の西村則康です。
本日は中学受験における永遠のテーマといっても過言ではない「苦手教科」についてお話しします。
早速1つ質問があります。
お子さんの苦手教科や苦手単元について、下記のように思ったことはありませんか?
- また、出てくるから大丈夫
- このまま学習を進めていれば、受験本番までには、わかるようになる
- 私も苦手だったから、仕方がない
- 4年生でつまずいてしまったので、これからもできないだろう
- センスがないという言葉を使ったことがある
- うちの子は、〇〇の勉強に向いていない
- お子さんに直接、「あなたは〇〇が苦手教科だから」と言ったことがある
もし1つでも該当するなら、お父さん・お母さんの考え方を少し変えるだけで、お子さんの苦手教科を克服できる可能性が高いと言ったら、きっと驚かれるのではないでしょうか。
この記事では、
なぜ、うちの子には苦手教科ができてしまったのか?その原因と、実はお父さん・お母さんだけが知らない、非常にシンプルな苦手教科に関する真実をお話していきます。
現在、苦手教科があり、お子さんの成績が伸び悩んでいるというご家庭は必見です。
1. 苦手教科はなぜできるのか?
得意、苦手な単元や分野は、いきなりあるときからそうなるわけではありません。
塾の授業中、「少しわかりにくいな」と感じたけど、そのまま放置してしまった、質問の機会がなくそのまま先生が先に授業を進めてしまった、ということが積み重なって、だんだん理解の度合いが低くなっていくのです。
要するに、「わからない」ことを先延ばしにし続けた結果、全くわからなくなってしまうということなのです。
その場で、すぐに理解できるまで質問したり、説明を聞くことができればよいのですが、残念ながら、多くの子どもたちが受けている塾の授業の中では、お子さん一人のためにあまり授業の進行を中断して説明することはできません。
こうやって苦手分野、単元ができていくのです。
更に「できない・わからない」という失敗経験が、お子さんのやる気を奪い、苦手意識が強くなっていき、最悪の場合は、勉強そのものが嫌になってしまうという悪循環に陥っていきます。
2. 苦手教科が定着してしまう「スパイラル方式」の落とし穴
上記のような背景があるにも関わらず、ある単元の理解がうまくいかなかったときに、塾の先生から「また出てきますよ」と言われることは珍しくありません。
この言葉を、
「また出てくるから大丈夫」
「今はできなくても、このまま頑張っていれば、いずれできるようになる」
というように感じ、苦手教科だけど、とにかく今は、できることをやり続けるしかないと考えるお父さん・お母さんは少なくないと思います。
ここでの、塾の先生の真意は何なのか?解説しましょう。
ご存知の通り中学受験において、多くの進学塾のカリキュラムは「スパイラル方式」という戦略に基づき、カリキュラムが設計されています。
サピックス生にとっては特に馴染み深い言葉だと思いますが、大手塾は皆「スパイラル方式」をとっています。
スパイラルとは「らせん」のことで、同じ単元を繰り返し、何度も習うことを意味しています。
たとえば算数で、図形の面積の問題は4年生で学習しますが、5年生、6年生でも学習します。
少しずつレベルを上げながら何度も学習していくので、理解が深まっていくというメリットがあります。
ただし、実は、このメリットを活かせるのは、前に習ったことを充分に理解できているお子さんに限られます。
なぜなら、次に出てくるときには今よりもレベルの高い内容になっているからです。
たとえば同じ図形でも、4年生では底辺と高さを直接扱うのに対し、5年生6年生では底辺の比と高さの比を取り扱うようになり、前回までに学んだことをベースとして、応用、発展的な内容を学習するというスタイルになっていることがほとんどです。
つまり「スパイラル方式」は、比較的難易度の低い知識を固めたあとに、時間をおいて、高度で複雑な問題を扱うことで、お子さんの理解のレベルを深めていくことにあります。
塾の先生のいう「また出てくるから」というのは、「またレベルが高くなって出てくるから、それまでにわかるようになっていてね」という意味と捉えなくてはいけません。
この意味を取り間違えて、「次に出てきた時にわかるようになればいい」と考えてしまうと、今度習うときには、より高度な問題を扱うため、何も理解できなくなってしまうのです。
非常にシンプルな事実なのですが、「苦手教科がある」とご相談をいただくご家庭の大半が、「スパイラル方式」の意味を間違って学習を進めてしまっています。
その結果、「わからないこと」が積み残されていってしまい、お子さんの基礎知識が不足した状態が続く上に、苦手意識も強まっていき、苦手教科が、知らず知らずのうちにお子さんに定着していきます。
ここまでをまとめると…
苦手教科についてお父さん・お母さんが知っておくべき事実 まとめ
- 苦手教科は「少しわからない」が積み重なった結果生まれる
- 塾のカリキュラム設計では、苦手教科を苦手と放置することは想定されてない
- 苦手教科を放置すると、わからないことが増え、モチベーションが低下しやすい
- 塾の先生の真意は、「次に習うまでに、ご家庭で基礎知識を固めてください」
- 苦手教科対策は、これ以上「わからない」ことを放置しないことが何より大切
ということになります。
苦手教科を、「苦手」として対策を打たないでいると、高学年になって、どんどん勉強が辛くなってしまうのは、プロ家庭教師の目から見ると、明らかです。
そこで、次項では、お子さんのタイプ別に、どのように苦手教科を克服していけばよいかをわかりやすくまとめてみました。
3. 【苦手教科診断】3種類の苦手教科 お子さんはどれに当てはまる?
苦手教科を克服するために、具体的な対策を取り始める前に、お父さん・お母さんが、まず初めにすべきことは、なぜ、お子さんの苦手教科ができてしまったのか?その経緯を知り、原因を特定することです。
実は、「苦手」が、お子さんや親の思い込みであるというパターンも少なくいですし、
「苦手」といっていても、正しい学習方法がわかれば、または、不足していた基礎知識が少し補われただけで、一気に理解が進むということも珍しくありません。
「いつ」苦手と思ったのか「何が」あったのか「どんな対策」を取ったのかそして、「どのように上手くいかなかったのか」の経緯を具体的に点検しなければいけません。
もちろんプロ家庭教師の視点であれば、「苦手」となった原因を個別に特定することは簡単なのですが、今回はわかりやすく下記にて「苦手教科」を大きく3つのタイプに分類しています。
これから苦手を克服していくために、お子さんが、どのタイプに当てはまるか、一度チェックしてみて、どのように苦手教科対策をすればいいのかを考える機会にしてみてください。
苦手教科タイプ1
「わからないこと」が積み重なって苦手になったタイプ
塾に通い続ける中で、小さな「わからない」体験が積み重なっていき、「自分は国語ができない…」といったように自信を失ってしまった結果、苦手教科となっているタイプです。
また、特定の単元でつまずいた経験や、特定単元の概念の理解が甘いため、わからないことが増えていき自信をなくしてしまっているタイプもあてはまります。
意外かもしれませんが、このタイプは上位クラスのお子さんによく見られる苦手教科の傾向になります。
他クラスと比較して、より複雑な知識を扱う上位クラスでは、「わからない」と思ってしまう機会もより多くなります。
そんな中で、ご家庭でのサポートが不足してしまうと、周りのできるお子さんと比較してしまい、より苦手意識が高まっていくでしょう。
このタイプの特徴は、他教科と比較して苦手教科の授業や宿題の際にモチベーションが下がる、同じ教科なのに特定の単元だけ特に点数が取れていない目立った箇所があるといった傾向が見られます。
具体的な対策としては、普段の授業で「わからない」ことを積み残しにしないことと、特に目立って足りていない知識が無いかを成績表などから分析し、基礎知識も含めて見直すことが大事です。
「【どの】単元が【なぜ】わかっていないのか?」という分析がご家庭だけ難しい場合は、早急に個別指導や家庭教師の手を借りて、原因を特定し対策を講じてもらうことで、大きく苦手克服に向けて前進できる可能性が高いです。
苦手教科タイプ2
授業は理解しているのに、テストの点数が伸びないタイプ
塾に楽しそうに通い、授業から帰ってきて、習ったことを聞いても、はきはきと答えて、しっかり授業が聞けているように見えるのに、テストの点数が伸びず、テストの点数をみることで毎度、苦手教科だと痛感するタイプです。
このタイプの特徴としては、1教科だけにとどまらず、複数教科が該当するケースもあります。
このタイプは、下位〜中位クラスに多く見られる傾向なのですが、意外と「理解力」の高いお子さんに起きやすい悩みになります。
このタイプでは、実際に理解ができているのに、「定着しない」ことが問題となっています。
原因としては、家庭学習や宿題の消化の仕方に問題があることが多いです。
この場合は、長期間に渡り、しっかり覚えておくことができるように、定期的な復習や、振り返り学習を導入することで問題を解決することができます。
また解法だけを覚えてしまっており、なぜそうなるのか?の理解が足りていないなど、日々の学習の仕方に問題がある場合も考えられます。
このようなケースでは、暗記だけに頼っていないか?を確認するために、家庭での学習の際に、お母さんに「なぜ、そうなるのか」を説明させる習慣をつけることが効果的です。
苦手教科タイプ3
親が「苦手」と決めつけてしまっているタイプ
意外と多いのですが、お子さん本人は勉強自体も好きで、塾も楽しく通っており、お子さん自身は、それほど苦手と思っていないのに、お父さん・お母さんから見た時に、「苦手教科」や「勉強ができない」と見えてしまうというタイプです。
このタイプでは、「うちの子は算数が苦手で…」とお父さん・お母さんが口にする頻度が多いと、お子さん自身が「そうか、自分は算数ができないんだ」と思ってしまい、本当に苦手になってしまうということがよくあります。
もちろん、お父さん・お母さんが心配する通り、成績が伸び悩んでいるのも事実でしょう。
ただ、「これが苦手でしょ?」とお子さんのモチベーションを削っても、得られるものもありませんから、「苦手意識」を芽生えさせないことに越したことはありません。
具体的な対策としては、「うちはこのタイプかも?」という心当たりがあれば、塾の先生などに相談して、「本当に苦手なのか」を確認してもらうことです。
ご自身が「苦手だと思った原因や理由」をしっかりヒアリングし、具体的な回答をもらえる先生に相談ができればよいのですが、明確な回答を得られずモヤモヤするという場合は、家庭教師・個別相談などの第三者への相談も検討しましょう。
このタイプは、「苦手」ができ始める初期段階によく見られますが、親子関係の悪化も含めて、後に深刻になりやすいタイプであるのも特徴です。
大切なことは、お父さん・お母さんの意識改革で、「自分は、この子の何を見て、苦手だと思っているのか?」を正しく理解することになります。
いかがでしょうか。
今「苦手教科」でお悩みのお父さん・お母さんは、お子さんの「苦手」がどのタイプに当てはまるか、わかりましたか?
ほんの少しのきっかけで、苦手の原因と、正しい学習方法を知ることができれば、苦手教科を克服することは難しくありません。
実際ご相談を頂いている多くのご家庭から「苦手教科の原因と向き合ってみたら、思ったほど深刻じゃなかった」という声を頂いております。
苦手教科を克服するために大切なことは、2つ。
スパイラル方式の正しい使い方は、「わからない」を後回しにしないということを知り、「わからない」ことには早急に対策を打つ。
そして、
お子さんの苦手の原因が何なのか?を知り、解決できることから、1つ1つ順番に解決していくことです。
この記事がお子さんの苦手を克服するきっかけになれば嬉しいです。